Vol.1 クラリネット兼コントラバスクラリネット奏者
原 浩介(はら こうすけ)氏
profile
●東京佼成ウインドオーケストラ楽団員
●昭和音楽大学卒業・同大学院修了
●昭和音楽大学非常勤講師・東京音楽大学非常勤講師(吹奏楽アカデミー専攻)
●クラリネット(各特殊管含む)の対面・オンラインによる個人指導
●クラリネットの奏法や練習方法について発信する 原浩介 - クラリネット|note
●原浩介公式ウェブサイト https://www.kosukehara.com
音楽は僕の宝島
何もわからなかった中学時代
部活の顧問に言われた「いいね!」
はじめてバスクラリネットを吹いたのは、中学1年の、仮入部の時でした。
たまたま音が出て顧問の先生に「いいねぇ」と言われて、大きく勘違い!(笑)
入学当初はバスケ部にも魅力を感じていましたが、兄が吹奏楽部のOBだったので先輩たちがとても優しかったし、あこがれていたバスクラリネットを担当できるのも魅力でした。
最終的に入部の決め手になったのは、実は「見た目」。
兄たちの吹奏楽コンクールの写真が、あまりにもかっこよかったからです(笑)
中学時代の吹奏楽部は、30名のB編成で、夏に開催される吹奏楽コンクールのために、夏休みに強化合宿を行うのが恒例でした。
中学1年生の夏休みに、はじめて部活の音楽合宿に参加しました。
朝から晩までバスクラリネットを練習できるのが、楽しくて仕方がありませんでしたね。
自宅では、なかなか練習ができないので「合宿中は、思う存分、誰よりも練習しよう」と思っていました。
落ちた。高3の夏休み。
でも合宿は参加した。
中学・高校の6年間、毎年、夏休みの音楽合宿に参加しましたが、高校3年生の最後の音楽合宿が印象に残っています。
高校の吹奏楽部は部員約100名の大所帯で、毎年県大会の直前に合宿をしていました。
ところが、私が最高学年となった年は、予選を通過することができず、県大会への参加がかなわなかったのです。
気合を入れて、県大会に向けて準備をしてきただけに残念でした。
予約手配ずみの県大会直前の合宿は、予定どおり行うことになりましたが、私たち3年生は任意参加という形に。それでも、多くの3年生が音楽合宿に参加したのです。
次世代の活動を手伝うという面もありましたが、要するに同期のみんな、純粋に部活動が好きだったんです。
合宿は「まなび」と「出会い」
中学高校時代の音楽合宿は、部活動を集約した行事で、集中して練習を積み重ねるために行いますが、今になって考えると、練習以上に意義があるのが、「同じ方向を見据える仲間たち」と一つ屋根の下で共通の時間を過ごすことでした。
寝る時も、食事も、練習も、一緒に過ごすことによって、人との関わり方が深くなり、密な関係が作れます。
合宿で学んだ人との関わり方・関係性の作り方については、今の自分に活きています。
激戦のオーディション
なぜたどりつけたのだろう
「こんな音を出したい!」「自分の音と何が違う?」
自分の音楽の宝島をさがす旅
当時の吹奏楽のコンクールを目指す中高生にとって、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)は、まさに憧れの存在でした。
顧問の先生に、コンクールの課題曲の参考演奏や、さまざまなジャンルの音楽を吹奏楽アンサンブルに編曲したアルバムニューサウンズインブラス(#New Sounds in Brass)を聴かせてもらい大感激。
「こんな音が出るんだ!」という驚きから、やがて「こんな音を出したい!」とTKWOの演奏に少しでも近づくために練習しました。
ニューサウンズインブラスは、ほぼ毎年発表されてきた人気シリーズで、現在48集を重ねていますが、その中でも「宝島」が大好きでした。
いつか自分も、このTKWOの楽団員として演奏したいと思い描くようになりました。
「自分の音と何が違うのか」何回も聴いては練習するを繰り返しました。自分の宝島探しです。
まずは音大を目指す
TKWO楽団員へのロードマップ①
「東京佼成ウインドオーケストラの楽団員として、演奏できたら...。そのためにはどうしたらいいのか?何からはじめるべきか?」と、中学生なりに考えましたが、どのような手段で入団できるのかも、入団するために何をしたらいいのかもわからず、まずは音楽大学を目指すことに。
当時の音大は基本的にバスクラリネットでは受験できなかったため、高校2年生になる時に、音大受験を視野にいれ、担当楽器をクラリネットに変更しました。
当時、音大で学んでいた兄の紹介で、入試に必要なピアノ・ソルフェージュの先生につき、さらに、その先生の知縁で、当時TKWO楽団員だった関口 仁先生にクラリネットを師事することができました。
こうして入学した大学では、クラリネットだけでなく、新たにコントラバスクラリネットも学び、クラリネット・バスクラリネット・コントラバスクラリネットでの演奏機会に恵まれました。
オーディションに応募
TKWO楽団員へのロードマップ②
管弦楽団でも、吹奏楽団でも、楽団員に欠員が出た時などに「オーディション」を行います。管楽器の場合、1名の募集枠に対して、100名超の応募があることも珍しくありません。
クラリネット・バスクラリネット・コントラバスクラリネットの3種の楽器の演奏ができる人を対象としたオーディションがあり、24歳の時にTKWOの楽団員になることができました。
吹奏楽という青春。
中学・高校6回の音楽合宿を通じて、集中練習をすることによって、コンクールに向けた演奏技術を磨くだけでなく、吹奏楽という同じ方向を目指す仲間が1つ屋根の下で寝食を共にすることによって得られる、チームワーク・人との関わりかたについても学べたと思います。
コロナ禍の影響もあり、人と密につきあうことにためらいを感じる中学生高校生も少なくないと思います。
中学高校の音楽合宿では、それぞれの部員が役割分担をするので、誰もが確実に「自分の居場所」を見つけることができます。
「食事係」「譜面係」どれも合宿には必要不可欠な役割です。その中に必ず「自分の存在意義」を感じる時がありますよ。