Vol.28 東京佼成ウインドオーケストラ事務局
荻沼 美帆(おぎぬま みほ)氏
profile
●東京佼成ウインドオーケストラ事務局
●広報(チケットサービス)、賛助会・サポーターズクラブ担当

東京佼成ウインドオーケストラの事務局として
チケットサービスを担当
私は現在、東京佼成ウインドオーケストラの事務局で、チケットサービスをメインに担当しています。それから、楽団のファンの方々によるサポーターズクラブの運営や、PRの施策を考えるなど、広報的な仕事もしています。大好きな佼成ウインドの演奏をより多くの方に聴いていただくために、陰で支える役割を担っています。
もともとは、私自身も小さなころから音楽をやっていました。母はピアノの先生、そして父はアマチュアでホルンを吹いていて、吹奏楽団に所属したり、今でもオーケストラをで演奏したりしています。音楽はいつも身近な存在でした。
私は3歳くらいからピアノを始め、小学校で金管バンドに入り、体が小さかったことから吹く楽器は少し難しいということで打楽器を担当しました。中学校、高校と吹奏楽部に入り、そこでも担当していたのは打楽器です。そのまま打楽器専攻で音楽大学にも進学しました。

副部長として奔走した
高校3年生の音楽合宿
合宿も何度か経験しています。最初の音楽合宿は、高校生の吹奏楽部で行った合宿でしょうか。私が進学した高校は、吹奏楽部に力を入れている学校でした。私は吹奏楽がやりたくて高校から入学したのですが、学校自体は中高一貫校だったため、合宿は中学校1年生から高校3年生まで、6学年の生徒が全て参加をしていました。茨城県の霞ケ浦の近くにある施設を借りて、確か二泊三日のスケジュールだったと思います。トラックに楽器を積み込み、バスで皆で移動して、コンクールに向けて演奏を仕上げる、練習中心のある意味濃密な合宿でした。
思い出深いのは、高校3年生の時の合宿です。私は3年生のときに副部長を務めていて、演奏そのものというよりも、部屋割りを考えたり、楽器の運搬を仕切ったり、いわゆる雑務をいろいろとこなしていた記憶があります。特に記憶に残っているのが、部員同士のもめごとの対応です(笑)。中学生の女子生徒たちの間では、その年代特有のいざこざが多く、対応するのが大変でした。
副顧問の先生が上手に丸く収めてくれたのですが、「自分も演奏に集中したいのに、音楽と関係ないことでトラブルを起こさないでほしいなあ」と思いながら奔走していました。特に副部長が雑務を担当すると決まっていたわけではないのですが、みんながいかに演奏に集中できる環境を整えるか、スムーズに練習に入れるようにするか、そういう部分も大事にしようと自然と意識をしていた気がします。


音大に進学してはじめて知った
演奏に集中する合宿の楽しさ
合宿には、音大に進学してからも何度か参加しました。大学の先生の門下生が集まる門下合宿や、楽器店が主催する打楽器専門の奏者ばかりが集まる合宿など、高校生のときとは違った楽しさがありましたね。
特に、楽器店が主催する合宿に参加したときは、それまで経験したことがないほど演奏に集中することができました。打楽器の奏者だけが一堂に会して、一日中レッスンを受けたり音を合わせたり。それこそ高校生のときの合宿は、副部長として自分の演奏はさておき、周りの対応に奔走していました。一方でその合宿は、参加者が演奏に集中できるように、主催者側がすべての環境を整えてくれていたので、雑務のことを考えることは一切ありませんでした。当時は「頑張って練習しないと」と必死でしたが、改めて振り返ると、あれほど打楽器に向き合うことができたのは、大変楽しく、ありがたい時間だったなと思います。
誰かが見ていてくれる……
そんな思いで皆を支えるサポート役に
大学在学中は、芸術祭の実行委員や、卒業アルバムを制作する卒業対策委員など、学内のいろいろな委員にも参加していました。もしかしたら、誰かをサポートしたりみんなの活動が上手くいくように準備したりする仕事が、性に合っているのかもしれません。
高校時代の副部長をはじめ、学生時代からこれまでいろいろな役割を担ってきました。いずれも、「ぜひやりたい」と手を挙げたというよりは、やってみない?と言われたものを、嫌がらずにとりあえずやってきた結果、今に至るという感じです。どんなことでもやってみると、一つひとつの経験が積み重なって、決して無駄ではなかったな、と思えるんです。
そう考えるようになったのは、佼成ウインドの初代常任指揮者だった汐澤安彦先生との出会いが大きいですね。汐澤先生は私の大学の恩師でもありました。音楽には厳しい先生で、たくさんのことを教えていただきました。その一つが、「とりあえず言われたことはやってみる」ということです。演奏はもちろん、まずはあれこれ考える前にやってみる。そうすることで、わかることや得るものがたくさんあると思えるようになったのは、先生のお陰です。
もう一つ、大学の時の友人に言われた忘れられない言葉があります。サポート役はそもそも目立つものではありませんし、表舞台に立ち、みんなから「よくやったね」と言われることはほとんどありません。好きでやっている裏方仕事ですが、時には「報われないな」と感じることもあります。でもある時、その友人が「ちゃんと見てる人は見ているから、大丈夫だよ」と声をかけてくれたんです。そのときいろいろとあって辛い思いをしていたのですが、その言葉を聞いて「よし頑張ろう」と踏ん張ることができました。誰かから感謝されたり褒められたりすることがなくても、誰かが見ていてくれるかもしれない。そう思うだけで、目の前のことをしっかりやろうと前向きに取り組めるようになりました。

お客様との会話が仕事のやりがい
一人ひとりに満足のいく時間を
佼成ウインドで働き始めて、もう12年になります。在学時は特に就職活動をしておらず、大学卒業後は別のオーケストラのチケットセンターでアルバイトをしながら、学生に音楽の指導などをしていました。そんな生活を4年ほどしていたときに、当時佼成ウインドの事務局にいた高校の先輩から声をかけられたことが、働き始めたきっかけです。
音楽家の道を全く考えなかったわけではありませんが、やはりたくさんの素晴らしい演奏家がいらっしゃるので、簡単ではありません。それでも、音楽に関係する仕事は続けたいなと思ってきました。いろいろな人とのご縁があって、声をかけていただき、今も大好きな音楽に携わる仕事を続けることができています。ありがたいことだな、と心から感じています。
今の仕事でやりがいと感じるのは、お客様と直接お話ができる時です。来てくださった方にこちらからできるだけ声をかけるようにしていますが、そうしていると、だんだん顔を覚えていただくことができて、「今日もよかったです」などと感想を言ってくださる方もいて。そうした会話ができることが、何よりうれしい瞬間です。一番うれしい瞬間ですね。席の手配をするときは、「ご自身も演奏者だから、この楽器が見やすい席がいいかな」とか、「楽団員のご紹介でいらっしゃる方だから、〇〇さんの正面の席にしよう」などと、それぞれのお客様に少しでも合った席をご用意するようにしています。恐らく佼成ウインドの中で、お客様の顔を一番多く覚えているのは、私かもしれません。

素晴らしい音楽を多くの人に届けるために
今、吹奏楽を楽しんでいる学生の皆さんに伝えたいことは、仲間と集まって演奏できる“今”の時間を大切にしてほしい、ということです。大人になって振り返ると、一人ひとりとの出会いが、どれほど貴重でかけがえのない時間だったのかを改めて感じます。一緒に過ごすことが当たり前のときは気が付かないのですが、大人になって初めて、仲間と集まって同じ音楽をつくることができるというのは、それだけで奇跡的なことなのだと思います。
それからもう一つ、ぜひ、プロの生の演奏を聞いてほしいです。今はインターネットでレベルの高い演奏をたくさん聴くことができますが、それでも、やっぱり直に聴く演奏は全く違います。学べることも多く、生の演奏でなければ得られない感動がたくさんあります。私も今でも、佼成ウインドの演奏を聴いて涙が出ることがあるんです。素晴らしい演奏を多くの方に届けるために、これからも、自分なりの役割を全うしていきたいと思います。

